2019.04.23

香水やフレグランスに使われる動物性の香りは4種のみ!種類と基本知識

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アロマテラピーとは、植物の香りを使った自然療法のこと。

 

使われるのは、植物から抽出した香り成分である精油(エッセンシャルオイル)のみで、動物性の香りや人工的に合成された香りは使用しません。

 

ただ香水や香料(フレグランス)の世界ではどちらの香りも使用されています。

 

今回はアロマテラピーでは使われない香りのうち、動物性の香りについてご紹介していきましょう。

動物性の香りとはどんなもの?種類は?

 
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香水などでよく使われることばは「アニマルノート」。

動物園のライオンやトラなど、肉食動物の檻の前に立った時に感じる匂いのことをそう呼びます。

実は香料として使われる動物の香りの種類は4種類のみ。

ジャコウジカ・ジャコウネコ・ビーバー・マッコウクジラから採れるものです。

英語で「ムスク」という意味のジャコウ(麝香)

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いわゆるジャコウの香り=ムスクは、雄のジャコウジカの腹部にある分泌腺「香のう(ジャコウ腺)」から採取。

ここで分泌される赤褐色の分泌物を乾燥させ、エチルアルコールで香りを抽出します。

ジャコウジカは絶滅危惧種に

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ジャコウジカはチベットやネパール、中国西部、シベリア辺りの高地(標高1,500~5,000m)に」生息。

大きさは山羊ぐらいです。交尾の時期になると、この香のうからメスを惹きつける匂いを出します。

中国の古い生薬の本「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」に、不老長寿の神仙薬として記載されており、薬として使っていたようです。

またアラビアンナイト(千夜一夜物語)の中でも、女性を惹きつけるための「男性用香料」として描かれています。

ジャコウの香りを研究したところ、強心作用や男性ホルモン様作用、呼吸興奮作用、不眠症を改善する効果などさまざまな薬理作用があるそうです。

ジャコウジカはもともと数が少なかった上、薬や香料として人気があり、高値で取引されたため、乱獲が進み、絶滅危惧種に。

現在では天然のものを入手することは困難です。

ジャコウジカの香りはどんな香り?

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ジャコウジカから取り出した香りをそのままかぐと、後頭部を殴られたような強烈な香りがするといいます。

動物の糞臭を濃縮したような香りで、アルコールで少しずつ薄めていくとまろやかになっていき、持続性のあるセクシーな香り「ムスキーノート」になります。

香水で香りを長持ちさせるための保留剤にもよく使われますが、現在では動物保護の観点から合成のムスク香料が使われています。

ムスクの香りを代表する成分は「ムスコン」で、1926年スイスの化学者レポルド・ルジチカ博士により発見されました。

ルジチカ博士は、合成ムスクを含む環状ケトンの研究が評価され、1939年にノーベル化学賞を受賞しています。

ジャコウジカよりも強烈なジャコウネコの香り

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ジャコウネコはネコ科ではなく、マングースに近いジャコウネコ科の動物。

シベットキャットとも呼ばれ、生殖器近くにある香のうから、黄白色のペースト状分泌物を雄雌両方出します。

この香料はシベット(霊猫香=れいびょうこう)と呼ばれ、エチルアルコールに溶かしてチンキとして使います。

ジャコウジカと似たような香りが採れるジャコウネコ

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ジャコウネコはエチオピアやインド、中国などに生息。体調43~71㎝ぐらい、尖った鼻をしています。

12種類ぐらいいますが、最も珍重されているのはアフリカ種のヴィヴェラ・シベッタというタイプ。

ジャコウジカからムスクを採っていたアラブで、ネコからも似たような香りが採れることに気が付き、これをムスク(麝香)と呼んでいたとか。

ただ、ジャコウネコから採れる香りの主体はムスコンではなく、それによく似た化学構造を持つ「シベトン」という物質であることが判明しました。

このため、ジャコウネコから採れたものを「シベット」と呼んで区別するようにしたそうです。

シベット(霊猫香)の香りはどんな香り?

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シベットはジャコウに比べるとさらに糞臭に近く、思わず顔を背けてしまうような強烈なにおいがするといいます。

こちらもアルコールで少しずつ薄めていくと、独特のアニマル臭に加え、ジャスミンのような甘さのある香りがしてくるそうです。

特に花の香りと組み合わせると引き立たせるということで、香りを長持ちさせるための保留剤プラス、クラシカルな女性用香水としてよく使います。

最も有名なものとしては「シャネルの5番」。

ただし現在では動物保護の観点から、1998年から合成香料に置き換えているとのことです。

こちらのシベトンについてもルジチカ博士が構造を研究し、合成に成功しています。

「カストリウム(海狸香)」と呼ばれるビーバーの香り

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ビーバーは雄雌ともに、肛門近くに香のうを持っています。

その中に黄褐色のクリーム状分泌物をためているので、それを取り出して乾燥させて利用。

エチルアルコールでチンキとして、もしくは、有機溶剤で香りを取り出してアブソリュートとして使います。

香料よりも毛皮としての価値が高かったビーバー

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ビーバーはシベリアやノルウェー、アラスカ、カナダなど、寒い地方の沼や湖に生息。

香のうから出す香りは、縄張りを示すとともに、求愛行動にも使います。

ビーバーはもともと良質の毛皮を求めて、大量に捕獲されてきました。

その後、ジャコウジカやジャコウネコ(シベット)の代わりに使われるようになったことから、比較的歴史は浅い動物性香料です。

シベリア産のカストリウムが革のような匂い(レーザーノート)がするということで、カナダ産のものより珍重されているそうです。

北米先住民の間では万能薬として珍重されてきましたし、古代ギリシャでも媚薬として利用されたという記録が残っているとか。

ノルウェー海に出没する大ウミヘビを撃退するという言い伝えもあったころから、大航海時代の船乗りたちはお守りとして肌身離さずもっていたようですよ。

ビーバー(カストリウム)の香りはどんな香り?

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強烈な皮革のような香りといわれていますが、産地によっては樹木のような香りがする場合もあるそうです。

これを薄めていくとジャコウのようなフルーティさやバニラのようなトーンが出てくるといいます。

このため、ラズベリーやストロベリーの香りを引き立たせるため、アイスクリームなどの食品にも添加されることもあるとか!

もちろん香水にも使われていて、最も有名なのがシャネルの「アンテウス」。

特徴成分としてはカストリンやベツリゲノールなど。現在では化学的に合成された香料を使用しているそうです。

偶然が作り出す龍涎香(りゅうぜんこう)

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龍涎香はアンバーグリスクと呼ばれ、マッコウクジラの腸内でできた結石です。

見た目は灰色の大理石のような模様をしたロウ状のもの。海にぷかぷかと浮かんでいたり、海岸に打ち寄せられていたりします。

アンバーグリスクとは、灰色(=グレー)の琥珀(=アンバー)という意味で、見た目からそう呼ばれるようになりました。

クジラが食べたタコなどのエサのうち、消化しきれずに残ったものが結石化したのではないかと考えられています。

商業捕鯨が行われていた時は、クジラの体内から発見されることがありました。

現在では和歌山県の太地町にあるくじらの博物館に展示されているので、チャンスがあったらぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか。

もし発見したら一躍大金持ちに!?

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商業捕鯨が禁止されてしまったため、現在で偶然に発見する以外に見つける方法はありません。

中国では非常に珍重されており、龍の涎が固まったものと想像して「龍涎香」と名付けたとか。

漢方薬として高価に取引されたそうで、清の時代にこの龍涎香と引き換えにマカオをポルトガルに譲ったという伝説も残されています。

たまに海岸で偶然見つけた人が大金を手に入れたというニュースが報道されます。

日本円で1g1,700円~2,000円あたりの値段で取引されているそうです。

金が2018年10月現在で1g4,787円ぐらい。大きなサイズのものを発見できれば、大金持ちになれるかも!?

日本では和歌山や石垣島がねらい目だそうですので、お近くにお住まいの方は探してみては?

アンバーグリスク(龍涎香)の香りはどんな香り?

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非常に重厚な香りで、コケのような土臭さとたばこのような苦み、ジャコウのような香りもするといいます。

香水に加えると、他の香料と調和し、長く香りを保つ保留効果が高いということで、高級香料に使われてきました。

織物についた香りは洗っても干しても落ちず、時間がたつほど良い香りがするといわれています。

成分としてはアンブレインという成分が重要なカギを握っているといいます。

海上でアンブレインが酸化分解され、芳香を持つアンブロックス(R) 、アンブロキサン(R) 、アンブリノール(R) (いずれも商標登録済)などに変化して、独特の香りを放つようになったものだということがわかりました。

日本では香料会社にしか知られていないものですが、海外ではよく知られており、メルヴィルの書いた小説「白鯨」や映画「八月のクジラ」にも登場シーンがあります。

動物の香りは合成香料の歴史そのもの

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現在はもちろん、かつても動物の香料は大変貴重で、宝石のように取り扱われ、なかなか手に入りにくいものでした。

このため、なんとかして合成するための研究を重ねてきたのです。

まずはルジチカ博士により「ムスコン」が発見されました。

その後、ダイナマイト発見の副産物としてニトロムスク化合物がみつかり、1888年以降、ムスクバウアー、ムスクアンブレット、ムスクケトンなど次々と発見。

現在では、安全性などを考慮したいくつかの人造ムスクが香料として活用されています。

アロマテラピーでは、自然の恵みや力を活用して、人間本来が持っている自然治癒力を高め、自ら心身の健康を取り戻す手助けをする自然療法のひとつ。

できるだけ人の手が加えられていない、自然のままの香りを楽しむのが本来の目的です。

動物の香りは自然の香りではありますが、その香りを取り出すためには、傷つけたり、殺してしまったりというプロセスが問題です。

調香師たちが創り出す芸術作品のような香水を、おしゃれとして楽しむ。その中で、合成香料として「動物的な香り」が果たす役割は大変大きなものです。

アロマテラピーには登場しませんが、動物たちの魅惑的な香りに触れるチャンスがありましたら、試してみてはいかがでしょうか。