2019.02.12

何千年も前から受け継がれる香りを楽しむ文化の歴史 世界編

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香水やアロマテラピー、好きな香りの柔軟剤など、香りを楽しむアイテムはたくさんありますよね。

五感のうちのひとつ、嗅覚を刺激する香りは、いつ頃から楽しまれるようになったのでしょうか。

そして、香水はいつ頃から用いられ、人々の生活に寄り添ってきたのでしょうか。

ここでは、大昔の人々が、どのようにして香りを楽しんできたのか、その歴史をご紹介します。

アロマテラピーのルーツはエジプト!?

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人類が、香りを楽しむようになったのは、火を使うようになってからのことと言われています。

香料を用いた記録のなかで、一番古いものは紀元前3000年頃のメソポタミアと言われており、この頃は香りがする杉の木を神様を崇める儀式で使っていたと考えられています。

神殿や王様の墓、葬祭殿など、数々の遺跡には、香りを用いる人々の姿が遺されています。

例えば、王家の谷の壁画には、睡蓮の香りを楽しむ古代エジプト人の姿を見ることができます。

また、古代エジプトの唯一の女性の王様、ハトシェプスト女王の葬祭殿には、乳香の木が運ばれてくる様子が描かれています。

ハトシェプスト女王の時代は、とても平和で、貿易が盛んに行われており、プント王国から運ばれてきた乳香の木の絵から、その時代の一部や乳香の木が身近な大切なものであったことを私たちに教えてくれます。

古代エジプトでは様々な場面で香が用いられた

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古代エジプトでは、神聖な儀式の際には必ずお香が焚かれたと言われています。

お香は、神様の世界とつながる手段として考えられており、香りを用いることで身を清めて、神格化することができるとも信じられていました。

そのため、王様が亡くなった時には、身体に香料をたくさん塗り、香料の持つ防腐・防臭の役割も兼ねてミイラにしていたようです。

ミイラ作りには、白檀や樹脂などが使われていましたが、そういった厳かな場面だけでなく、もっと日常にも楽しまれていたようです。

たとえば、部屋に香りを漂わせて楽しんだり、衣類に香りをうつしたり、直接肌に塗ったりと、形は違えど現代の芳香剤や香水のように楽しむ文化がすでにあったのですね。

特に、興味深い点がその方法です。

古代エジプト人たちは、香りをただ焚いて楽しむのではなく、いくつかの香る植物をブレンドし、ワインやはちみつ、いぐさ、シナモン、ヘナなど16種類もの香料を合わせて軟膏を作り、それらを熱した炭にのせて焚いたり、薬として活用することもありました。

驚くべきことに、薬として用いられていたもののなかには、現在でも一部受け継がれているものがあるそうです。

古代エジプト人が香りを身につけたひとつの理由に、良い香りが健康の証であると考える文化も影響しています。

この頃は睡蓮の花の香りを楽しむことがポピュラーで、帽子に香りを染み込ませて出掛けるなど、香りをまとうことがおしゃれの一貫にもなっていたんです。

このように、宗教儀式だけでなく、私たちと同じように香りを身にまとい、楽しむ文化がはるか昔からあったのですね。

ギリシャ時代の香りの楽しみかた

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ギリシャ時代になると、交易によりより香料のバリエーションが増え、さらにギリシャから世界に香料の文化が伝わる機会が増えていきます。

ローマに伝わった香料の文化は、やがてローズウォーターが主役の香りアイテムとして広まり、その利用シーンが浴室や寝室にまで拡大することとなりました。

古代ローマの貴族たちは、1日のうち3度は入浴していたと言われています。

その都度、大量の香油を身体に塗り、香りを身にまとうことが貴族の習慣の一部にもなりました。

さらに、美食家の多い古代ローマ貴族は、魚醤の生臭さの解消のために、大量の香料を用いていたことでも知られています。

この時代、ギリシャからアラビア半島やインド、中国などにも香料が輸出されるようになり、その際に必要となったガラス容器の発展にもつながったと言われています。

ちなみに、ローマ帝国ではお風呂が大衆的な文化でもありましたが、ローマ帝国が滅びるとお風呂文化も廃れていきます。

そのため、お風呂になかなか入れなくなった人々の体臭を隠す目的で、香水文化が広まったという説もあるんですよ。

中世ではグラースが香料の中心地に

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世界の香料の中心地と言われているのが、グラースという町にあります。

グラースは、カンヌ国際映画祭で有名な南フランス・カンヌから北西の位置にある、丘の上の町です。

この地は、とても温暖で、ジャスミンやローズ、ラベンダーなどの栽培にとても適しており、香料の中心地の名にふさわしい雰囲気を醸し出しています。

もともと、グラースは革製品が有名な町でした。

この頃のヨーロッパは、東洋から様々な香料が十字軍によって持ち帰られ、商人によって取引されていました。

16世紀ごろに、グラースに香料の文化が取り入れられると、皮の臭いを解消してくれる画期的なアイテムとしてたちまち使用者で溢れたことが、香料の中心地と言われるきっかけになりました。

もともと皮の臭い対策として用いられた香料が、のちに香水産業の中心地になるまで拡大化し、現在も有名な化粧品会社などがあります。

精油の生産地は他の国が主力となった現在でも、グラースからは調香師が多く輩出されるなど、その歴史にふさわしい地を保ち続けている点も魅力ですね。

香水のはじまりはいつ?

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紀元前3000年頃のメソポタミアでは、すでに香りを楽しむ方法はいくつかあり、香水のルーツは正確にいつからとはっきりと分からないと言われています。

ただし、現在のシュッとひとふきする香水のような、液状のアイテムが生まれたのは、アルコールが発見された10世紀以降のこととなります。

この頃より、精油の抽出方法が発見され、現代の香水のようなアルコールベースの香水が広まるようになりました。

ハンガリー・ウォーター

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香水の元祖と言われるものは、もうひとつあります。

ハンガリー・ウォーターは、別名「若返りの香水」としてハンガリー王妃エリザベートのために作られました。

王妃はその頃72歳。持病が改善するほか、若さを取り戻し、ポーランド国王からプロポーズされたという伝説まであります。

その真偽は定かではありませんが、このハンガリー・ウォーターは現在でも手作りして楽しむ人の多い、人気のあるものですね。

王妃に献上されたハンガリー・ウォーターは、ブランデーとローズマリー、タイムが主な原料で、18世紀頃まで人気が続いています。

オーデコロン

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オーデコロンのはじまりにも諸説ありますが、有名なのはイタリアでアクア・ミラビリス(すばらしい水)と言われていたものがドイツのケルンの水として広まり、18世紀後半にフランス軍兵士が大量にパリに持ち帰ったことで大人気となったという話。

ナポレオンが活躍したこの時代、ナポレオン自身もオーデコロンの愛用者でした。

フランス軍兵士たちが大量にケルンの水を持ち帰ったのは、愛する妻や恋人へのお土産だったそうです。

このエピソードを聞くと、香りのアイテムを異性に送る行為は、ずっと昔からあったんだと、少しロマンチックな気分にもなりますね。

そもそも、オーデコロンはケルンの水という意味の言葉で、そのまま製品の名前として知られるようになったんです。

今でも、香水のひとつのジャンルとして確立し続けていますね。

それから間もなくして、フランスでは香水の専門店がオープン。

香料と香水が曖昧だった時代から、香水が香料の1ジャンルとして独立し、宗教儀式や薬品に用いるのとは別の、化粧品としての役割が際立つようになった時代とも言えるでしょう。

19世紀以降は香料の利用範囲が拡大

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19世紀以降は、科学の発展によって合成香料の製造ができるようになりました。

天然の香料の成分を分析し、できる限り再現性の高い香料を生産することで、量産が可能となり、香水は民衆が使いやすいアイテムへと変わっていきます。

特に、合成香料の生産に力を注いだのは、ドイツ。

もともと化学産業が盛んだったドイツが、いち早く合成香料の発展に貢献します。

はじめは、できるだけ自然の香料に近い再現性を目指していた合成香料も、しだいに自然の香料にない香りをつくりだすことも行うようになり、香りのバリエーションがさらに広がりました。

今では、自然にない良い香りも含めて自分の好みを探す楽しみも味わえる世の中になりましたね。

その一方で、精油などの天然の香料にこだわって使用する人も多く、単に香りの印象だけでなく、その原料や製造方法などを含めて、人々の好みが細分化してきたとも言えるでしょう。

香水の歴史を変えたシャネル

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合成香料ができるようになってからは、香水にも徐々に積極的に配合されるようになっていきます。

そこで、大きな功績を残したのが、シャネルNo.5でした。

シャネルの5番と聞けば、多くの人がその存在にピンとくるほど、有名な香水ですね。

この香水によって、香水原料に合成香料が使われることに注目が集まることとなり、合成香料の時代の幕開けともいえる存在となりました。

香水の歴史のなかでは、シャネルNo.5の存在は実に大きく、ひとつの歴史を作り上げたと評価する人も多いです。

近年では天然香料も人気

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合成香料は香りのバリエーションに富み、多くの人が手にするようになってしばらく経ちますが、近年では天然の香料にこだわる人が徐々に増えてきたとも言われています。

香りのアイテムを身にまとったり、アロマのアイテムを使う時の香料が、天然か合成かを気にかけてみたことはありますか?

天然香料は、合成香料に比べると、香りのバリエーションが少なくなるのは仕方のないことですが、それでも自然由来の香りということに魅力を感じる人が多く、香水に関しても天然香料だけを使ったものが再注目を集めています。

まとめ

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今回は、香りの歴史についてご紹介しました。

香りを楽しむ文化は、かなり昔からあったことがわかりますね。

その手段や方法は違えど、目的は今と変わらない方法で香りを身にまとっていたことも興味深いですね。

昔から、体臭対策を気にかける習慣があったという事実も、今の私たちに通じる感覚なのではないでしょうか。