2018.09.25

【精油の抽出法を解説】第4回 伝統的に行われてきた「油脂吸着法」

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香りの取り出し方は様々。第1回目は最もポピュラーで効率よく香りを取り出す方法「水蒸気蒸留法」を紹介しました。

2回目は熱による香りの変質を受けやすい柑橘類から香りを取り出すための「圧搾法」。

3回目は精油量が極端に少なく、デリケートな香りを持つローズやジャスミンなどのためにとられている「溶剤抽出法」について解説しました。

最後の4回目は、溶剤抽出法が編み出される前に、伝統的に行われてきた「油脂吸着法」と、最先端の技術を使用した「超臨界流体抽出法」についてお伝えします。

精油が油脂に吸着されやすい性質を利用した「油脂吸着法」

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精油の含有量が極端に少なく、熱による変性を受けやすいローズやジャスミンなどは、石油エーテルやエタノールといった有機溶剤を使用し、香りを取り出しています。

こういった方法がとられるようになったのがいつなのかはさだかではありませんが、それ以前は、「油脂吸着法」というやり方で抽出されていました。

豚や牛の脂を使い、香りを吸着させて取り出すやり方です。

よくタバコのにおいが髪につきやすいのは、頭皮の脂に匂いが吸着するため。その原理を活用したものです。

動物の脂は常温では固形(クリーム状)ですので、そこに花びらを埋めていきます。

香りを移したら、また新しく花びらを埋めて、これ以上香りを吸収できないところまでほぼ毎日、約1か月間繰り返し作業します。

その飽和状態まで香りを吸収したものを「ポマード」と呼び、ここにアルコールを加え、香りを移します。その後、アルコールを飛ばして、香りだけ取り出すプロセスは溶剤抽出法と同じです。

その手間のかかることを考えると、気が遠くなりますね!

「油脂吸着法」には固形脂と液体油を使う2種類がある

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豚や牛の脂を固形(クリーム状)のまま使用して抽出する方法は、「アンフルラージュ(冷浸法)」と呼ばれています。香料の町として有名なグラース地方では1901年頃から行われてきたそうです。

一方、脂を加熱(50℃~70℃ぐらい)して溶かした液体で行う場合を「マセラシオン(温浸法)」といいます。

ジャスミンやチュベローズは「アンフルラージュ(冷浸法)」で、ローズやネロリ、バイオレットは「マセラシオン(温浸法)」を取ることが多かったようです。

現在でも香りの町として有名なフランスのグラース地方に行くと、観光客向けにこの方法をデモンストレーションで見せてくれていますよ。

その他の香りの取り出し方

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精油や植物の有用成分は油に溶けやすい、また、アルコールに溶けやすい性質を持っています。

このことを利用して、アルコールに植物を漬け込み、香り成分等を取り出したものを「チンキ(浸出剤)」といいます。

また植物オイルに花びらなどを漬けこんで作るインフュージョンオイル(浸出油)もあります。カレンデュラオイルやセントジョンズワートオイルなどがそうです。

また、最先端の抽出方法としては、液化した炭酸ガスやメタンなどを使用した「超臨界流体抽出法(フィトール)」というものもあります。

この方法は香りだけではなく、通常の方法では取り出せない栄養価や有用成分を取り出せる場合があり、サプリメント製造にも使われているようです。

映画「パフューム ある人殺しの物語」に見る伝統的な香りの抽出法

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トム・ティクヴァ監督の映画「パフューム ある人殺しの物語」は、パトリック・ジュースキントのベストセラー小説「香水 ある人殺しの物語」を基に映画化したもの。2006年に封切られ、日本では翌年に公開されました。

主人公は18世紀のパリの貧民窟で生まれ、奴隷として売られた青年グルヌイユが主人公。

驚異的な鼻(ネ)を持ち、どんな匂いもかぎ分け、女性の体臭に魅せられていくうちに、超えてはならない一線を超えていくというファンタジックかつ、グロテスクなストーリーです。

グルヌイユは香水の町、グラースで「アンフルラージュ(冷浸法)」を会得。その技術使って集めた香りで、ついに究極の香水を完成させます。

映画の最後にその香りが放たれた瞬間に起きる圧巻のクライマックスシーンは、香りが持つ魔力を実感させられます。

映画の中では、当時の香りを抽出する技術や調香師の仕事、暮らしぶりなどが描かれ、アロマの歴史に興味がある方なら大変面白い作品。

ただ残酷なシーンがあまり好きではないという方には、おすすめできませんので、気を付けて視聴してくださいね。