2019.01.08

アロマテラピーの名脇役【前編】基剤(キャリアー)の基本と使い方

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アロマテラピーは植物の香りを使ったリラクセーション法のひとつ。

主役である精油は、植物の花・葉・根・果皮・木部・樹脂などから抽出したエキスで、含まれている成分によって異なる香りをもっています。

精油は植物に含まれている状態よりも、約100倍に濃縮されたもの。

自然の状態に比べ、大変強い香りがします。また、精油は天然の化学物質ですから、そのまま触れると、肌や粘膜を刺激する恐れがあります。

このため、さまざまな基剤(キャリアー)で薄めて使うのが通常です。

今回は前編・後編の2回に渡り、アロマテラピーの名脇役である「基剤」についてその種類と使いこなし方をご紹介。

前編では、いろいろな基剤の紹介とその用途や使い分けについて。中でも最もいろんな場面で使える「みつろう(蜜蝋)」については、後編でもより詳しくご紹介していきたいと思います。

アロマテラピーで使われる基剤の種類について

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精油の入った瓶をそのまま嗅ぐと、大変強い香りがします。そのままではちょっとキツ過ぎますよね。このため、何かで精油を薄めて楽しむのが通常です。

この時香りを「適度に薄めて鼻に届ける」ために使用するものを「基剤=キャリアー(carrier)」と呼んでいます。

キャリアーとはすなわち鼻に届ける(運ぶ)ものという意味。

アロマテラピーでよく利用される基剤のいろいろについて簡単にご紹介していきましょう。

基剤(キャリアー) 「空気」

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最も簡単でリーズナブルな基剤は空気。ティッシュに1~2滴たらして、デスクの上に置いておくだけで完了です。

精油が空気で薄められ、拡散されてお部屋がさわやかな香りに包まれます。

同じように空気をキャリアーにする方法でも、アロマポットやディフューザーなどを使うと、よりアロマテラピーらしい雰囲気がでますね。

基剤(キャリアー) 「水」

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続いてよく使われるのが水(お湯)。

洗面器などにお湯(39~42度)を張り、精油を1~3滴たらして手足をつけて温まる部分浴や、バスタブに入れて楽しむ全身浴がそうです。

お風呂のリラクセーション効果と香りの癒しの相乗効果で、1日の疲れが洗い流され、ゆったりした気分になれますね。

精油は水には溶けないので、肌に触れると刺激を感じる場合があります。

お風呂等にそのまま入れるときは、滴数を守って(部分浴は3滴まで、全身浴は5滴まで)楽しみましょう。

あらかじめ、精油をアルコールなどに溶かしてから入れるのもおすすめです。

基剤(キャリアー) 「アルコール」

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香り立ちをよくするために使われるのがアルコール。

香水やルームスプレーなど、揮発しやすいアルコールを加えることで香りの拡散力をよくします。

精油は水には溶けませんが、アルコールにはよく解けます。

ルームスプレーなどで楽しむときは、あらかじめアルコールで精油を溶かした後、水を加えるとよく混ざります。

香りの持続力はだいたい1~2時間ぐらいでしょうか。

またアルコールには消毒効果があるので、水だけよりも保存性がよくなります。

基剤(キャリアー) 「植物油」

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アロマトリートメントに欠かせないのが植物油。

アーモンドやオリーブ、セサミ油など、植物から搾油したものを使用します。

オイルを使うと香り立ちがゆっくりで、だいたい6時間ぐらい肌の上に留まるといわれています。

香水もアルコールではなく、オイルベース(香油)にすると柔らかく香るので、強い香りが苦手という人にはおすすめです。

精油を肌にのせても安全な濃度として、日本アロマ環境協会では1%以下を推奨。英国式では2~3%、フランス・ベルギー式では10%ぐらいまでと国によって基準がバラバラです。

人種や体質によって、香りへの感受性などが違いますので、最初は低い濃度で始めて自分にとって心地よい濃度を探しましょう。

基剤(キャリアー) 「みつろう」

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最も香りの持続性がよいといわれているのが、みつろうを使ったクリームです。

みつろうはミツバチが巣を作る時に分泌するワックス(ロウ)で、私たちの暮らしの中でもよく使われている基剤のひとつ。

化粧品やキャンドル、クレヨン、床を磨くワックスなど、あらゆるところで活用されています。

そのままでは固くて使えないので、植物油を加えて柔らかいクリーム状に。リップクリームやハンドクリーム、練香水などを手作りするときには欠かせません。

オイルよりもさらに香りの持続性がよく、肌の上にだいたい12時間ぐらいは留まるといわれています。

生活に浸透している割には、その作られるプロセスや効能などがあまり知られていないみつろう。

次のセクションでは、どうやって作られるのか、そしてなんのためにミツバチは作るのか。

みつろうが私たちの生活をどんなふうに豊かにしてきたのか、その歴史について、より詳しく解説していきましょう。

みつろうはなぜ作られる?どうやって作られる?

 
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ミツバチの巣は六角形の部屋(巣房)がいくつも連なってできています。

一匹の女王バチを頂点に、一つのコロニーをつくるミツバチ。巣房の中ではその子どもを育て、食料であるはちみつや花粉を貯蔵しています。

この巣房一つ一つをつなげて支える建材として使われるのがみつろうです。

一つのコロニーに最低でも約1万5千~2万5千匹ぐらい、夏季の活動期になると6万匹以上のハチが暮らすといいます。

これだけの数が暮らし、その食料を蓄えるとなるとしっかりとした家(巣)が必要ですね。

なんと1㎏のみつろうで、22㎏ぐらいまでの重さを支えられるそうです。

ミツバチはどうやってみつろうを作るのか?

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ミツバチははちみつを食べてみつろうを作ります。

みつろうは、お腹にある蝋腺(ろうせん)という器官から分泌。空気に触れて薄いうろこ状になったロウ片を口に入れ、咀嚼してこねていきます。

分泌されたときは透明な液体ですが、口の中で蜜や花粉、プロポリスなどと混ざることで、黄色~オレンジ色をした独特の香りをもつ「みつろう」へと変化。

このロウを使って巣を作り上げていくわけです。

みつろうの主な成分は、保湿性のある脂肪酸(パルミチン酸やセロチン酸など)やワックスエステルなどで、水や空気を弾きやすい性質があります。

みつろうには未精製のものと精製されたものがある

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ハーブショップなどに行くと、みつろうをタブレット状にしたものが売られています。

黄色いものは自然のまま巣から加圧もしくは、湯せんなどでみつろうを取り出し、目の大きなフィルターで濾しただけの未精製のもの。

はちみつや花粉、プロポリス、ロイヤルゼリーなど、ミツバチが創り出すさまざまな成分が微量ながらも含まれています。このため成分由来の色が付き、やわらかな甘い香りがします。

一方、白いものは目の細かなフィルターで漉し、さらに活性炭などで不純物を取り除き精製。

色や香りがほとんどないので、ろうそくやクレヨン、口紅などの化粧品によく使われています。

アロマテラピーでは、ミツバチの恵みをそのまま活かして楽しみたいもの。使用するときは未精製のものをお勧めします。

みつろうの色や香りは一つとして同じものがない

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未精製のみつろうは「黄色」といいましたが、実はすべて同じ色ではありません。

ミツバチの巣ごとに異なりますし、ミツバチの種類やどんな花から蜜を集めているかにより、色も香りも違うのは当然のこと。

淡い黄色から茶色まで存在します。

ミツロウはミツバチがはちみつを食べて分泌し、口の中で咀嚼してつくられるもの。同じミツバチが分泌したものでも、その時の食糧事情などによっても変化します。

自然が創り出すものはまさに奇跡。その時にしか出会いないものともいえるでしょう。

古代から使われてきたみつろうの歴史

 
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ミツロウが歴史上で登場するのは、古代エジプト時代。紀元前4,200年前にミイラの保存に使われたという記録があるそうです。

ミイラといえば、没薬(ミルラ)が語源になったといわれていますね。

彼らはプロポリスが持つ天然の抗菌力についてもよく知っていたといわれ、こちらも防腐剤として活用していた形跡があります。

はちみつの利用はさらにもっと古く、1万年以上前から野生のミツバチからはちみつを採取していたとか。

紀元前6,000年ごろに描かれたスペインのアラニア洞窟の壁画に、その様子が描かれているそうです。

古代エジプトではすでに、巣箱を使った養蜂まで行われていました。はちみつがいかに大切なものだったかがわかりますね。

古代ギリシャ・ローマ時代には、ろうそくの原料として重要視され、養蜂を行うのはみつろうを採取するのが一番の目的だったのではともいわれています。

日本では「滋養強壮の薬」として使われ、正倉院にもおさめられていたという記録も残っているそうですよ!

ミツバチが創り出す奇跡

 
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ミツバチが創るものはみつろうだけではありません。普段私たちが甘味料としてもよく使うはちみつ。

アロマテラピーでは保湿剤として手作り化粧品やバスソルトなどによく入れます。

ミツバチはこの他にも女王バチの食事として知られるロイヤルゼリー、健康食品として注目されているプロポリスなどもそうです。

ハチが創り出すさまざまな食品や成分は、私たちの健康維持にも役立つものがたくさん。

みつろうだって、「コムハニー(巣蜜)」という健康食品として一緒に食べられているものです。

アロマテラピーで使う「はちみつアブソリュート」

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実はドイツでは、はちみつの香りを抽出した「はちみつアブソリュート」というオイルも存在します。

ハチの巣からアルコールを使用してとりだすもので、甘く柔らかくまさに「はちみつの香り」!

オレンジやバニラ、ローズなどとブレンドするとよく合います。

心を温め、ハッピーな気分してくれる香り。疲れている時は甘い香りで、優しい気持ちにさせてあげるのもいいですね。

みつろうが化粧品によく使われる理由

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最も身近なものとしてはやはり化粧品。口紅やクリームなどに裏書されている成分表を見てみましょう。

保湿成分として「みつろう(もしくはビーワックス)」と書かれているはずです。

みつろうには、水分と油分を混ぜ合わせる乳化作用があり、化粧品にはとても便利。

また口紅やリップクリームなど塗りやすい硬さに仕上げたいときも、混ぜ合わせる油分の量を減らすだけで調整可能です。

また、口紅やチークなどに入れる着色剤を、むらなく混ぜ合わせる作用があります。

最近では少なくなりましたが、アイライナーやアイシャドウ、マスカラ、ファンデーションなどにもかつてはよく使われていました。

キャンドルやクレヨン、鉛筆などにも使われるみつろう

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最近ではパラフィンに取って代わられてしまいましたが、キャンドルもみつろうでつくります。

パラフィンに比べると煤(すす)が少ないのがメリット。

アロマクラフトなどで、手作りキャンドルを作る時はビーワックスを溶かして色や香りを付けます。

自然食品を扱うショップなどでは、みつろうクレヨンもあります。ナチュラルにこだわるなら、このクレヨンでキャンドルに色付けするのがおすすめです。

この他にも鉛筆や薬のソフトカプセル、塗り薬、艶出しワックスなどにも使われるみつろう。

融点が60度と比較的低いこともあり、扱いやすいため、古代から彫刻や工芸品の鋳型としても重宝されたそうです。

アロマテラピーの香りを楽しむための名脇役「基剤」

 
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アロマテラピーの主役は香りを持つ「精油」。でもその香りを快適に長く楽しむためには基剤の存在は欠かせません。

水やアルコール、植物油、みつろうについて紹介してきましたが、この他にも重曹やクエン酸を使ったハウスクリーニング、塩やクレイを使ったバスソルト、パックなどさまざまな基剤ともマッチングが楽しめます。

基剤は、精油を安全な濃度まで薄めるとともに、鼻へ香りを運ぶために欠かせない存在。

基剤を使いこなすことで、アロマテラピーのバリエーションが広がり、生活をさらに豊かにしてくれます。

基剤の中でも最も長い時間、香りを留めておくことができる「みつろう」は、アロマテラピーの中でも重要なもののひとつ。

後編ではこのみつろうを使った、アロマクラフトやホームケアの楽しみ方をより詳しくご紹介していきます。