2018.12.25

調香を楽しむための基礎知識4
名香から学ぶブレンドのヒント

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気に入った精油を少しずつ買い足し、ラインナップが充実していくと、自分だけの「オリジナルの香り」を創ってみたくなります。

精油でつくられたフレグランスは、お店で販売されている香水とは異なり、自然で優しい香り。

「こんな香りに包まれてみたい」というイメージをうまくブレンドで表現できたら、さらにうれしいものです。

オリジナルブレンド(調香)を楽しむための基礎知識をご紹介するシリーズ。

1回目は、植物の種類や部位で精油を分類する、最もポピュラーな方法「フレグランス・チャート式」についてご紹介しました。

2回目は精油が持つ香りのノート(調子)、3回目は精油を心理的・肉体的側面から分類する「サイコ・アロマ・チャート式」。

そして最終回の4回目は歴史に名を遺した名香をご紹介。プロのブレンドから調香のヒントを探ります。

香水の一つのタイプになったコティの「シプレ」

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「シプレノート」という香調が生まれるきっかけをつくったのが、コティ社の香水「シプレ」。1917年に発売されました。

当時の香水は薬瓶のようなボトルに入れられていました。フランソワ・コティは、宝飾商ラリックに香水ボトル制作を依頼。その後、コティとラリックは次々と芸術作品のような香水を発表し、話題をさらいました。

「シプレ」とは地中海にあるキプロス島(フランス語でシープル島)のこと。この島で栽培されているベルガモットなどの柑橘を使った練香、「シープル島の小鳥」がつくられていました。

この香りをベースにコティは、オークモス(樫の木に生える苔)とムスク(雄のジャコウジカの分泌物)、パチュリ(シソ科の植物)を組み合わせた今までにないタイプの香水を完成。

「シプレ」の香りはその後、多くの香水会社に影響を与えました。ゲランの「Mitsuko」や「イデール」、ディオールの「ミス・ディオール」などが次々誕生。

ベルガモットなどの柑橘系とオークモス、パチュリなどを骨格に組み立てた、甘く重クセのある香りのことをシプレノートというようになりました。

「シプレ」に使われた香りは?

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残念ながら、コティの「シプレ」は廃番になっており、今その香りをかぐことはできません。

25種類の天然香料が9割を占め、残りをハイドロキシシトロネラール、イオノンなど4種類の合成香料で構成されていたそうです。

●トップノート(最初に香る)
ベルガモット・レモン・ネロリ・オレンジなど。

●ミドルノート(次に香る)
ジャスミン・ローズ・カーネーション・ライラック・イランイラン・イリスなど。

●ベースノート(最後に香る)
オークモス・パチュリ・ラブダナム・スティラックス・アンバー・バルサム・バニラ・シべット(ジャコウネコの分泌物)・ムスク(雄のジャコウジカの分泌物)など。

「シプレ」を精油で再現するには?

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このうち精油にない香りはシベット、ムスクなどの動物系の香りです。

ラブダナムはシストローズやシスタスともいわれる植物で、樹脂や枝葉から蒸留します。スモーキーで力強い香り。

スティラックスは深く甘くスパイシーなトーンがある香りで樹脂から香りを採ります。

値段はかなり高くなりますが、カーネーション、ライラック、イリス(アイリス、アヤメ科の根)やアンバー(ヒノキ科の植物で化石樹脂、コハク)精油は香料として販売されています。ブレンドに慣れてきたら挑戦してみてもいいですね。

精油で再現する場合は、それぞれの香りの強さを考慮する必要があります。また、種類が多くなりすぎるとまとめるのが困難です。

8種類~10種類ぐらいを目安に組み立ててみましょう。

ベースノートは全体の20~30%、ミドルノートは40~50%、トップノートは残りの40~20%の間で調整します。

<参考レシピ> 
合計:20滴
・トップノートに使用:ベルガモット(4滴)、レモン(3滴)
・ミドルノートに使用:ジャスミン(4滴)、ローズAbs.(5滴)
・ベースノートに使用:オークモス(0.5滴)、パチュリ(2滴)、ラブダナム1.5 滴)

もう一つの香調を生みだしたウビガン社の「フゼア・ロワイヤル」

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「シプレノート」と同じオークモスを使った「フゼアノート」。

1882年フランスの老舗香水社、ウビガンが生み出した「フゼア(フジュール)・ロワイヤル(王家のシダという意味)」がきっかけで生まれた香調です。

フゼアとは、シダのイメージで創られたもので、天才調香師ポール・パルケが創り上げた香り。ラベンダーをトップに、ベースに合成香料であるクマリンを初めて使いました。

シダのグリーンで爽やかなイメージと陰りを感じる重厚感。どちらかといえば男性的な印象の香りです。

「フゼア」系を代表する香水としては、ゲラン「ジッキー」、ダナ「カヌー」、シャネルの男性用フレグランス「アンテウス」、ラルフ・ローレン「ポロ」などがあります。

「フゼア・ロワイヤル」に使われた香りは?

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最近ではフゼア系の香りでブレンドされた女性用香水はあまりないようです。

●トップノート(最初に香る)
ベルガモット・ラベンダー・クラリセージ・スパイクラベンダー・プチグレンなど。

●ミドルノート(次に香る)
ゼラニウム・ローズ・ヘリオトロープ・カーネーション・オーキッドなど。

●ベースノート(最後に香る)
オークモス・クマリン・バニラ・ムスクなど。

フゼア系を精油で再現するには?

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クマリンは合成香料ですが、桜餅に似た香りで、精油でいうとトンカ・ビーンズで代用できます。

<参考レシピ>
合計:20滴
・トップノートに使用:ベルガモット(2滴)、ラベンダー(6滴)
・ミドルノートに使用:ローズ(2滴)、プチグレン(2滴)、ゼラニウム(2滴)、カーネーション(1滴)
・ベースノートに使用:オークモス(1%濃度にアルコール希釈したもの4滴)、トンカ・ビーンズ(1%濃度にアルコール希釈したもの1滴)
※カーネーションの変わりにイランイランでも可。

香水を身近に、女性ファッションの一部にした「シャネルNo.5」

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世界で最も売れているといわれるこの香水は、ロシア人の調香師エルネスト・ボー1921年の作品。

女優マリリン・モンローの「私はシャネルの5番を着て寝るの」という名言とともに、私たちの記憶に刻まれています。

香水のターニングポイントになった「シャネルNo.5」

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「シャネルNo.5」が誕生する前は、植物や動物から採られた天然香料中心にした香水が主で、「キツイ」香りがほとんどでした。

もっと日常的に気軽に使える香水を、というところから生まれたのがこの香水。

脂肪族アルデヒドという合成香料をバラやジャスミンなどの香りと組み合わせ、温かみのある華やかな香りを完成させました。

脂肪族アルデヒドは、単体で嗅ぐと、人の脂っぽい体臭のような匂いがします。それを少量ブレンドすることで、その他の香りを時には甘く、シャープに引き立たせる役割を担います。

その後、このフローラルと組み合わせた「アルデヒド」タイプの香水が次々発売されるようになりました。

「シャネルNo.5」が誕生するきっかけは北欧の白夜

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ポーは父親がフランス人、母親がロシア人。ロシア・モスクワの香水会社であるラレ社の調香師でした。

1905年のロシア第一革命の際に、ロシアからフランスへ疎開した際、パリ・モード界の女王ガブリエル・ココ・シャネルに出会います。

その後、第一次世界大戦でフランスの軍人として北欧に駐屯していたポー。

真夜中でも日が沈まず、湖や川が白く輝き、そのほとりに咲く美しい花々や若葉のようなみずみずしい香りが深く記憶に残りました。

帰国後、シャネルに雇われた彼は、そのイメージを基にバラやジャスミンを駆使して新しいシャネルのための香りを創り上げていきます。

当時生まれたばかりの合成香料「脂肪族アルデヒド」と組み合わせ、1~5番と20~24の番号を付けた2つのグループの試作品をシャネルに届けました。

シャネルがその中から選んだのが「No.5」。彼女のコレクションが発売されるのが5月5日で、名前もそのまま「シャネルNo.5」と決まったのです。

「シャネルNo.5」を精油で再現するには?

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シャネルの5番には合成香料(アルデヒド)や動物性の香料が使われていますので、そのままそっくり同じに再現することはできません。

●トップノート(最初に香る)
ベルガモット・レモン・ネロリ・アルデヒドなど。

●ミドルノート(次に香る)
ジャスミン・ローズ・イランイラン・リリー・イリスなど。

●ベースノート(最後に香る)
ベチバー・サンダルウッド・シダーウッド・パニラ・アンバー・シべット・ムスクなど。

<参考レシピ>
合計:20滴
・トップノートに使用:ベルガモット(5滴)、ネロリ(1滴)
・ミドルノートに使用:ジャスミン(5滴)、ローズ(5滴)、イランイラン(1滴)
・ベースノートに使用:ベチバー(1滴)、シダーウッド(1滴)、バニラ(1滴)

名香を参考にオリジナルブレンドのフレグランスを作成するポイント

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フローラル系は香りが強く、失敗しやすいのが難点。特にイランイランは控え目にしましょう。

ベースノートは全体の20~30%、ミドルノートは40~50%、トップノートは残りの40~20%の間で調整します。

(1)パルファム(香水) 香りの濃度15~30%
香りの持続力は6~7時間ぐらい。

・無水エタノール3ml
・精油合計18滴(1滴=0.05ml・30%濃度)

(2)オー・ド・パルファン 香りの濃度8~15%
香りの持続力は5時間ぐらい。

・無水エタノール(もしくはホホバオイル) 5ml
・精油合計15滴(1滴=0.05ml・15%濃度)

(3)オー・ド・トワレ 香りの濃度4~8%
香りの持続力は3~4時間ぐらい。

・無水エタノール 10ml
・精油合計16滴(1滴=0.05ml・8%濃度)

(4)オー・デ・コロン 香りの濃度3~5%
香りの持続力は1~2時間。

・無水エタノール 10ml
・精製水 5ml
・精油合計15滴(1滴=0.05ml・5%濃度)

(5)スプラッシュ・コロン 香りの濃度1~3%
香りの持続力は1時間程度。

・無水エタノール 10ml
・精製水 20ml
・精油合計18滴(1滴=0.05ml・3%濃度)

※(1)~(3)までのアルコールをホホバオイルに置き換えると、より柔らかな香り立ちで持続力もUPします。
※濃度が高いので手首の内側や耳の後ろなど、局所的に着けること。
※手作り品の場合は自己責任でご使用ください。
※使用前には必ず、パッチテストを行い、赤みや刺激を感じた際はただちに使用を中止。水や石鹸等で洗い流し、場合によっては医師の診断を受けるようにしましょう。
※肌の弱い人は精油のみをブレンドしたものをガラス遮光瓶で保存し、ディフューザーで使うのもおすすめ。

アロマを本格的に学びたい!調香に興味がある場合は?

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趣味や独学で楽しむのもいいですが、自分でいろんな精油を揃えるのは大変です。

そんな時は、アロマテラピースクールに通うのも一つの手です。アロマの基礎からプロフェッショナルまでレベルに合わせたレッスンが用意されています。

また、調香だけ楽しむような「アロマブレンドデザイナー」コースというのもあるので、興味をもったところだけ、チャレンジしてみるのもいいですね。

【レシピ協力】
イースターセブン アロマテラピーサロン ショップ スクール

イースターセブンアロマテラピースクールは、今回ご紹介したレシピが学べるブレンドコースを開催しています。

「自分らしいアロマテラピーを発見」できるのがこの学校の強み。
興味のあるかたはホームページよりお問合せください。

■イースターセブン横浜校あざみ野
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