2019.02.22

オレンジの香り基本知識!歴史と精油のプロフィールを紹介

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オレンジは花から「ネロリ精油」、枝葉から「プチグレン精油」、果皮から「オレンジ精油」と3種類の精油が採れる植物です。

心がぱっと明るくなるような鮮やかな果実の色。さわやかで甘くて癒される香りは、誰にでも好まれる精油のひとつです。

今回はオレンジが漢方やアロマテラピーに使われるようになった歴史と、精油のプロフィールについて紹介しましょう。

ビターとスイート、2種類の品種があるオレンジ

 
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オレンジの精油はビターオレンジ(学名:Citrus aurantium)とスイートオレンジ(学名:Citrus sinensis)の2種類から採れます。

原種に近いのはビターオレンジで、食用として果実を甘く改良してできたのがスイートオレンジです。

オレンジの原産国は中国・インド。ビターオレンジは10~11世紀頃、アラブ人によりヨーロッパの地中海地方へ持ち込まれたといわれています。

一方スイートオレンジは、1520年頃に中国から帰国したポルトガル人がヨーロッパに持ち帰り、そこからコロンブスがアメリカへと持ち込み、西インド諸島やフロリダで栽培されるようになったようです。

オレンジの学名とヨーロッパに伝わったルート

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精油には必ず学名が表記されています。学名は全世界共通で、国際植物命名規約に基づいて決められたもの。「属名」と「種小名」をラテン語(もしくはギリシャ語)で列記します。

ビターオレンジの学名は、Citrus aurantium(キトルス・アウランティウム)。

Citrus(シトロン、ミカン)はラテン語で、ギリシャ語のKedros(=この実は黄色く、香りもよく、食べると甘いの意味)に由来しているのではといわれています。

Aurantiumはラテン語のaurantium(=ダイダイ)、aurum(アウラム)は黄金やaurora(オーロラ)から来ているようです。

もう一つのスイートオレンジはCitrus sinensis(キトルス・シネンシス)で、sinensisは支那、つまり中国産。Sinensisuのうち「ensis」は産地を表す接尾語です。

オレンジの産地として現在最もポピュラーなアメリカ

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オレンジ(Orange)は、インドのサンスクリット語でナーランガ(Naranga)。

ペルシャではナラング(Narang)、アラビアではナランジ(Naranji)と呼ばれていました。

そこからヨーロッパへ渡り、フランスでオラーンジ(Orange)、イギリスにわたりオレンジ(Orange)と呼ばれるようになりました。

16世紀ごろ、オレンジは宣教師とともにアメリカ大陸、カリフォルニアにも渡ります。いまではオレンジといえばカリフォルニア、フロリダというイメージになっていますよね。

中国では富の象徴・幸運を招くといわれるオレンジ

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オレンジの薬効に目を付けたのが古代中国人。

ビターオレンジの未熟な若い実を乾燥させたものは「枳実(きじつ)」といい、漢方薬の生薬として使われてきました。

消化を促し、筋肉のけいれんを鎮める「四逆散」に配合。成熟した果皮「橙皮(とうひ)」は健胃薬として使われているようです。

日本で作られている温州ミカンは「陳皮(ちんぴ)」といい、消化不良や食欲不振に使う「平胃散」や七味唐辛子、お風呂の入浴剤などにも使われてきました。

中国や日本などアジアでは、食品や漢方などに使われ、身近な存在のオレンジ。

特に中国では幸福と繁栄の象徴であり、風水でもラッキーアイテムになっています。

ネロリとプチグレン精油が採れるビターオレンジ

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ビターオレンジの花から採れるネロリ精油。フローラルでさわやかで優しく、印象的な香りです。

真っ白で肉厚の可憐な花びら(花弁)から、水蒸気蒸留法(蒸気で蒸して採油する方法)で精油を採ります。

この他、枝葉から水蒸気蒸留法でプチグレン精油、果皮からは圧搾法(絞って採油する方法)でビターオレンジの精油ができます。

ただし、ビターオレンジの果皮からとった精油はあまりよい香りではないこと、紫外線を浴びると肌を刺激する光毒性がるフロマリンが多いので、アロマテラピーでは使われないことが多いです。

ところで、オレンジの花のことをなぜ「ネロリ」というようになったのでしょうか?

イタリアのネロラ公国の后妃が愛した香り「ネロリ」

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ネロリは、イタリア・ローマ郊外に実在するネロラ(Nelora)村が語源と言われています。

この村を治めていた当主、フラビオ・オルシニ侯爵のところへお嫁に来たのが、フランス貴族の娘としてパリで華やかに暮らしていたマリー・アンヌ・トレモワイユ。

大変美しい女性で、1度結婚したものの若くして死別し、オルシニ侯爵と再婚したのです。

ただ、夫は自然科学が大好きで、今でいう草食系。田舎で夫とのつまらない生活に退屈したマリー・アンヌは、たびたびパリへ戻り、華やかな社交界の暮らしを満喫していたようです。

そんなある日、村で芳しい香りがする精油がマリー・アンヌを待っていました。

ネロリ村に群生していた野生のビターオレンジの花から、オルシニ公が趣味で精油を蒸留していたのです。

マリー・アンヌはさっそく夫の作った精油を革手袋にたらし、パリに舞い戻ります。そのさわやかで甘い香りはたちまちセレブたちの注目を集め、大評判に!

「ネロラ村に咲く植物から抽出した」と回答したことから、「ネロリ」と呼ばれるようになったそうです。

ビターオレンジの花は結婚式のティアラに

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ビターオレンジの中でもCitrus aurantium amara(キトルス・アウランティウム・アマラ)もしくは、Citrus vulgaris(キトルス・ヴァルガリス)という品種は、最上質のネロリ精油が採れるといわれています。

初夏に花を咲かせ、その真っ白な花は「純潔」を象徴し、愛を確保するため、イタリアやスペインでは結婚式のティアラ(髪飾り)として使われてきました。

南フランスのグラースでは、寝室にネロリを蒸留したときにできるフローラルウォーターを置き、寝つきを良くするために飲んだといいます。

今でもグラースにいくと、パンやクッキーなどにフローラルウォーターを使ったものが売られていますね。

ネロリ精油は大変高価なもの。1㎏蒸留するためには、オレンジ花が2~3トン必要です。100㎏で1㎏採れるラベンダー精油と比較すれば、その希少さがわかりますね。

ネロリはプチグレン精油で偽和される場合も!

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枝葉から蒸留するプチグレン精油は、ウッディなトーンとフローラルの香りが混ざり合う不思議な印象を受けます。

さらに、苦みのあるオレンジのようなさわやかなイメージも。男性に好まれる香りでもあります。

プチグレンとは、Petit(プチ=小さな)、grain(グレン=粒)という意味。

もともとは小さな粒のようなビターオレンジの実から蒸留したことがその由来だそうです。果実からはあまりにも採れる精油の量が少なかったので、代わりに枝葉で蒸留するようになりました。

ネロリの精油が大変高価なため、このプチグレン精油を混ぜてかさ増し(偽和)して売られることがあります。値段が安いものには注意が必要です。

プチグレン精油はオレンジだけではなく、レモンなどからも蒸留されます。レモンのプチグレンは、きちんとレモンの香りがするのでおもしろいですね!

スイートオレンジからは果皮から採れる精油のみ

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スイートオレンジからは、果皮から圧搾法で精油を採ります。

甘く心を温めるような香りで、落ち込む心を太陽のように明るく照らしてくれるようです。

スイートオレンジ精油には、リモネンが多く含まれています。果実のさわやかでフレッシュな香りは、食欲がないときにすっきりさせてくれるようです。

同じオレンジでも蒸留する部位が違うと香りも作用も違う

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ネロリやプチグレンは、脳にある中脳や脳幹の内側に分布する細胞の集まり、縫線核に届く香りといわれています。

縫線核は、セロトニンというホルモンを分泌し、気持ちを安定させ、眠りの質をよくするといいます。

ヨーロッパのビクトリア朝時代、当時流行したコルセットをきつく締めあげる服装のため、ご婦人方はよく気分が悪くなり失神したそうです。

そんな時に気付け薬としてネロリをよくかがせたといいます。このため、ヨーロッパでは、ショック状態のときに使うといいといわれているそうですよ。

ネロリもプチグレンも香水には欠かせない精油。

世界最古の香水といわれるドイツの「オーデコロン(ケルンの水)」にも使われました。

この香水はナポレオンもいたく気に入り、戦地で士気を高め、健康管理に役立てたとか!

甥であるナポレオン三世とユージェニーの結婚式の際は、柑橘やネロリを使って創り上げたゲラン最古の香水といわれる「インペリアル」が誕生。

その香りが気に入ったユージェニーは、ゲランをお抱え調香師にしたそうです。

日本のミカンから採れた精油を楽しむ

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日本のミカンは温州ミカンと呼ばれ、様々な品種やブランドがあります。

学名はCitrus unshiu(キトルス・ウンシュウ)といい、中国から伝わった際に突然変異して生まれたのではといわれています。

「温州」は、中国の浙江省(せっこうしょうにあるミカンの産地として有名な地名にちなんでつけられたそうです。

江戸時代から栽培され、和歌山や愛媛、静岡など温暖な地域が有名な産地。日本最古のミカンといわれる四国産「紀州蜜柑」を、紀伊国屋文左衛門が江戸へ送った記録が残されています。

ミカンは日本でも中国同様に神聖な植物。儀式や神棚へお供えとして使われてきました。いまでもお正月に鏡餅の上に飾ります。

日本人にとってミカンは冬の楽しみ。こたつでテレビを見ながら食べるのは最高ですね。

ご年配で精油にあまりなじみのない方でも、オレンジの香りは親しみやすく感じるのは、この思い出と結びつくからです。

最近では日本産のミカンからも精油を採油しています。

柔軟剤や洗剤の人工的で過剰な香りに体調不良を訴える「香害」が問題になっていますが、周りに配慮したいときはこういった自然な香りがおすすめです。

中でも「ミカン」の香りは、誰にとってもなじみやすいので、不快に感じることがあまりありません。

疲れた時に気軽に香らせてみてはいかがでしょうか。