2019.02.26

マリア様のバラ「ローズマリー」をさまざまな角度から紹介します!

shutterstock_408614731

ローズマリーはお料理用のハーブやガーデニングでもおなじみ。シソ科の植物で、強い樟脳の香り(防虫剤として使われてきたクスノキの香り)でぱっと目が覚めるようなトーンを持つ精油です。

実はローズマリー、「マリア様のバラ」と呼ばれることも。

今回はそのローズマリーの名前の由来と、古くからどのように使われてきたか、そして、シェイクスピア作品でどのように登場するのか、さまざまな角度からご紹介していきましょう。

マリア様のマントでブルーに染められたというローズマリー

 
shutterstock_751012765
ローズマリーの花は、薄いブルーをしています(品種によって違う色もあります)が、もともとは白い花だったといいます。

その昔、聖母マリアが、ヘロデ王(ユダヤ人の王、紀元前73年~4年)から迫害を受けていたイエス・キリストを連れて、エジプトへと逃亡。

途中、緑の葉が茂り、白い花が咲くローズマリーの木の下で休憩することに。

マリア様はご自分のブルーのマントをかけ、横たわるとそのまま眠ってしまったそうです。

目がさめると、白い花がマントと同じブルーに変わり、その時に「薬効」もいただいたといいます。

以来、このハーブをマリア様のバラ(Rose of Mary)、「ローズマリー」と呼ぶようになりました。

ローズマリーの強い香りは、キリストが悪魔を払うために授けたもので、このため二人は身を隠すことができ、追っ手をかわすことができたのだと信じられたのです。

万能薬、聖なる木としてのローズマリー

 
The Rosary
ローズマリーにまつわるキリストのエピソードから、ヨーロッパでは魔除けの聖木として、大切に使われてきました。

宗教儀式には必ず使われましたし、結婚式での祝福として花嫁が一枝身に着けるという習慣もあったそうです。

古代ローマ人は聖なるローズマリーを神殿や家の周りに植え、古代ギリシャ人は頭脳を明晰にし、記憶力をよくすると信じられてきました。

古代エジプトでは儀式でローズマリーの小枝を焚き(薫香)、ファラオに捧げる習慣がありました。紀元前3,100年のファラオのお墓からもローズマリーのブーケが発見されたそうですよ。

ローズマリーを使った若返りの水「ハンガリアンウォーター」

shutterstock_522084916
ローズマリーをめぐる最も有名なエピソードといえば「ハンガリアンウォーター」でしょうか。

ハンガリー王カーロイ1世に嫁いだポーランドのエリザベート(ポーランド語でエルジュビェタ)は、60歳を迎えて手や足のしびれや痛みを訴え病に伏せるようになりました。

これを治すためブレンドしたのが、ローズマリーを主成分とするアルコールベースの芳香治療水「ハンガリアンウォーター」でした。

これを朝に晩に使い続けた王女は、たちまち回復し、若返えったことからポーランド王から求婚されたという伝説です。

このエピソードからローズマリーは「若返りのハーブ」ともいわれるようになったそうです。

17世紀のヨーロッパでペスト除けとしても使われた歴史

shutterstock_469923983
古代エジプト、古代ローマ時代から薬効があるもの信じられてきたローズマリー。

1630年フランスのトゥールーズでペスト(黒死病)が大流行した際、亡くなった人から泥棒を働いた4人が捕まりましたが、なぜか彼らだけはペストに感染しなかったといいます。

その泥棒たちは、セージ・タイム・ローズマリー・ラベンダーなどをお酢に浸して作った「秘密の薬」を飲み、身体に塗っていたため、感染しなかったと白状したとか。

この秘密の薬は「4人の泥棒の酢」という名前がつき、売り出されるや否や大ヒットしたそうです。

今でいえばハーブビネガーですね。

江戸末期に日本に渡来したローズマリー

shutterstock_220517011
ローズマリーの和名は「マンネンロウ(万年蝋、もしくは万年朗)」です。

いつも触るとべたべたする感触から、蝋(ロウ)がかかっているようだということからその名がついたといわれています。

もう一つの「万年朗」は、ローズマリーが常緑植物であることから「永遠の青年」という意味が由来だともいわれます。

この「べたべた」した蝋のようなものは、いわゆる精油成分。葉や茎、花にもたっぷり精油をたくわえているローズマリーは、少し触れただけでも強い香りを放ちます。

漢方の生薬としても使われ、「迷送香(メイテツコウ)」と呼び、健胃・鎮痛・駆風(ガスを体の外に出す)作用を期待して使われていました。

キリスト教では「祝福」を表す植物

shutterstock_757093912
マリア様とその幼子を守ったローズマリー。イエス・キリストの背丈よりも成長をすることはないという言い伝えがあります。

また、イエス・キリストが十字架にかけられた年齢、33歳(33年)を迎えると枯れてしまうとも。

ローズマリーは、キリスト教の宗教儀式や結婚式の祝福、葬儀では死者の魂を慰めるために欠かせない“聖なる植物”です。

そして、イエスと関わりが深いことから、クリスマスにはローズマリーでリースなどを作り、飾る習慣もありました。

そんな歴史に思いを馳せながら、次回のクリスマスにはローズマリーでリースを創り、飾ってみてはいかがでしょうか。

ローズマリーの学名とケモタイプ(化学種)について

shutterstock_512137999
アロマテラピーで使われる精油には必ず学名が表記されます。学名は精油を正しく選ぶための手がかりとしてとても重要で世界共通。

国際植物命名規約に基づいて決められたもので、「属名」と「種小名」をラテン語(もしくはギリシャ語)で列記します。

ローズマリーの学名は、Rosmarinus officinalis(ロスマリヌス・オフィキナリス)といいます。

Rosmarinusはラテン語で海のバラ。Ros=Dew(しずく)、marinus=sea(海)という意味です。Officinalisもラテン語で薬効があるを意味する言葉。

ローズマリーは、フランスやチュニジア、モロッコ、スペイン、ポルトガルなど、主に地中海側に沿った場所で栽培されています。

ごつごつした乾燥地が好きで、日当りのよい山の斜面でよく育ち、比較的強く丈夫。品質のよい精油を採るため、スペインでは3月~7月、フランスでは3月~5月に収穫のピークを迎えます。

3種類のローズマリー精油が売られている?

shutterstock_702607489
ローズマリー精油は、主に3つのタイプが販売されています。1.8シネオール(1.8-cineole)、カンファー(Camphor)、ベルべノン(Vervenone)です。

同じローズマリーなのに、香りをかぐとかなり違う印象を受けます。

特に何も表示されていないローズマリーのほとんどは、1.8シネオールタイプが多いようです。

1.8シネオールという成分はオキサイド類といい、別名ユーカリプトールともいいます。

独特のスーッとした刺激的な印象。喉や鼻などが辛いときに嗅ぐとすっきりしますよね。この成分は、のど飴やタイガーバームなどにも配合されています。

カンファーはケトン類で安定性のよい成分。クールな感じが増します。ケトン類は体内に入ったときに代謝されにくいといわれ、大量に用いると神経毒性を示す場合があるので注意が必要です。

同じケトル類でもベルべノンは、比較的安全といわれ、グリーン調の落ち着いたトーンの香り。刺激は少なめです。

ローズマリーをディフューザーで香りをかぐ分には問題ありません。

ただ、妊娠中や小さいお子さんがいらっしゃるご家庭では、ローズマリーを多用するのは避けた方が無難といわれています。

なぜ含有成分が異なる精油が出現する?

shutterstock_1083289274
同じ植物なのに、生育状況(天候、土壌、水など)により、精油に含まれる成分が極端に異なる場合があります。この精油を「ケモタイプ(化学種)」といいます。

1.8シネオールタイプは「Rosemarinus officinalis ct 1.8cineole」、カンファ―タイプは「Rosemarinusofficinalis ct camphor」、ベルべノンタイプは「Rosemarinus officinalis ct verbenone」と表記。

「ct」はケモタイプの意味で、その後ろに多く含まれている成分を表記するルールになっています。

ケモタイプは同じ種の植物で、自然に起こる突然変異。学名は同じです。

化学種は、ローズマリー以外にタイムやバジルなどで出現しやすいそうです。

フランスやベルギーなど「成分」を重視するアロマテラピーでは、品種改良して用途に合わせた成分が多く含まれるものを栽培するケースもあります。

甘い香りとブレンドすると引き立つローズマリーの香り

shutterstock_150298559
ローズマリーは香り立ちがよくすぐに鼻に届くトップノートでありながら、香りが継続するミドルノートの要素もあります。

お料理ではよく肉に臭みを抑え、香りづけするときに使われ、じゃがいもの香草焼きが有名ですよね。

ローズマリーのスッキリとした香りを活かして、グレープフルーツやレモン、ペパーミントなどと組み合わせてリフレッシュできる香りでブレンドを仕上げるのもいいですが、甘い香りとブレンドすると、意外に合います。

ハーブ系ならマジョラムやラベンダー、カモミール。濃厚なフローラルで苦手な人が多いイランイランとブレンドすると、軽さや爽やかさがでて使いやすいと感じる場合も。

香りが残った後、不快な印象がでる場合もあるので、少し控えめの滴数で試してみるのがおすすめです。

シェイクスピアの作品、重要なシーンに登場するローズマリー

shutterstock_460582699
シェイクスピアはイギリスの劇作家・詩人。ストラトフォード・アポン・エイヴォン出身で、1585年頃にロンドンに進出し、引退までの約20年間でたくさんの傑作を生みました。

中でも「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」は四大悲劇といわれ、日本の舞台でもよく上映されている作品です。

この他にも「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「真夏の世の夢」、「ジュリアス・シーザー」などご存知の方もたくさんいらっしゃることでしょう。

ローズマリーが登場する最も有名な作品は「ハムレット」

shutterstock_745222285
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ(To be, or not to be : that is the question)」というハムレットのセリフで最も有名な作品。

ローズマリーは、主人公であるハムレットのお妃候補であったデンマークの貴婦人、オフィーリアのセリフに登場します。

「There’s rosemary, that’s for remembrance. Pray you, love, remember.(これはローズ―マリー、記憶な花。お願い、愛しい方。私のことをずっと忘れないで)」

ハムレットが誤ってオフィーリアの父親を殺めてしまい、愛する人の過ちに錯乱するオフィーリア。ハムレットと間違え、兄にローズマリーの小枝を手渡しながら言うセリフです。

オフィーリアはその後、川に落ちて溺れ死んでしまいます。

そのシーンを描いたジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア(1852年)」が描いた有名な絵画。

澄んだ川に浮かぶ若い女性の悲劇的な死と、たくさんの花々に囲まれている美しさの対比が印象に残る作品です。

「ロミオとジュリエット」でローズマリーは結婚と死の場面で登場

shutterstock_666860512
「おお、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?(Oh, Romeo, Romeo! Why are you Romeo?)」というあまりにも有名なセリフでおなじみの「ロミオとジュリエット」。

敵対する家同士のロミオとジュリエットが恋に落ち、ロレンス神父の計らいで密かに結婚します。しかし、ロミオは街頭の争いに巻き込まれ、誤ってジュリエットの従弟ティボルトを殺してしまいます。

このためロミオは街を追放。その間にジュリエットは親から強引に結婚させられそうに。

ロレンス神父から死んだように見せかける薬をもらい、婚礼の日に飲みます。

ジュリエットが死んだと思い込む家族にロレンス神父がこういいます。

「She’s not well married that lives married long, But she is best married that dies married young. Dry up your tears, and stick your rosemary. On this fair corse, and. as the custom is.(長く結婚していることが良い結婚とははいえない。結婚してすぐに死ぬ女性こそ、最上の結婚をしたのです。涙を拭き、ローズマリーで飾りなさい)」

ジュリエットが結婚するために用意していたローズマリーは、死者を弔う花になってしまったという印象的なシーンです。

古くから愛されてきたハーブ、ローズマリーの魅力

shutterstock_115802536
ラベンダーとともに古くから使われてきた植物、ローズマリー。

ラベンダーは魂(soul)、女性を象徴し、ローズマリーは精神(spirit)、男性を象徴するといいます。

映画「卒業」に使われ、大ヒットしたサーモン&ガーファンクルの「スカボロフェア」。

そこでもローズマリーが登場します。

「スカボローに住む、心から愛した人に今でも自分のことを覚えているか聞いてほしい」。

そんな詞には「パセリ(苦みを消す)、セージ(忍耐の象徴)、ローズマリー(貞節・愛・思い出)、タイム(勇気の象徴)」として様々なハーブが登場します。

「追憶・記憶・変わらぬ愛」という花言葉を持つローズマリー。大切な人に贈りたいハーブの一つです。